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黒田百合 <演出家>

2026 年 04 月 10 日 (金)

2012年に第1回公演を上演した可児オリジナルの市民ミュージカル「君といた夏」(略称「キミナツ」)は今回で5回目を数えます。その年によって、集まった出演者100人に合わせながら台本や配役をアレンジし、まさに同じものは2つとない作品に仕上げます。さて今回はどんな仕上がりになるのか?「キミナツ」全公演で演出を手がける黒田百合さんにお話を伺いました。

金沢を拠点に創作活動をされていらっしゃいますが、最近はどんな活動をされていますか?

2024年の能登半島地震により金沢に移り住んだ被災者さんに向け、金沢市民芸術村でコミュニティの場所となるオープンサロンを開きました。アートを通して新しい価値を見出し、金沢市民とも繋がれる「場」の提供です。コミュニティのない場所に移り住んだ20~30人くらいの人たちが、毎週金曜日を心待ちにして集まってきます。そして仮設住宅集会所で孤立をなくすために実施している「小さな上映会」のための毛糸座布団を作り、被災地支援を行っています。それぞれが出来ることを考え、孤立しないために繋がろうとしています。「誰も取り残さない」その精神はアーラのポリシーと同じです。また自分が主宰する劇団「夢宇人」(むうにん)は35周年を迎えました。チケット代の一部を義援金として寄付するなど、この2年は震災に寄り添いました。復興するまでずっとこの支援活動を続けたいと思っています

「キミナツ」は今年で5回目の上演となります。配役や台本がその年によって変わるのも面白いですね。

2012年に「君といた夏」は作・瀬戸口郁、音楽・上田亨で誕生しましたが、初演の時はオーディションに集まった人に役を当てはめていきました。トモコ役は当初、無かった役でしたが、オーディションにイメージがぴったりの女の子がいたのです。また初演では「闇の王」でしたが、2015年にはイメージに合う人がいなかったので、「闇の女王たち」に代わりました。そんな風に出演者を見て中身が変わることは多々ありました。前回はコロナ禍でしたので、授業参観の際に歌う「わが校の星ヒロミくん」をカットしましたが、今回は復活しています。また少年5人とは話し合いながら、新たに隙間の台詞を埋めるようにしています。毎回、彼らと向き合いながら真摯に稽古を進め、最大限の力を出せるよう見守っています。

市民ミュージカルは、参加する皆さんと観るお客様の両方への満足度が求められるところがあります。やり甲斐や難しさをどのように感じていますか?

目の前に小学校1年生から80歳まで100人いますが、ひとりひとり違っているので、それを認めながらも、舞台で輝けるように考えています。先ずは「安心、安全な場づくり」をすることでしょうか。こうして長い間続くと言うことは、この作品に対して参加者に愛情があるからですし、この作品に対する期待もありますので、頑張りたいです。「キミナツ」は長く続いてきた作品ですので、初演の時にお母さんのおなかにいた子どもが、前回辺りから出演するようになりました。ある子はおばあちゃんと一緒に、あるいは母と長男、次男と一緒に参加しています。こうして人の成長を見守ることが出来て、幸せだなぁ~とたびたび思います。青虫役から参加した子どもが、主役の少年になり、やがて不良中学生役になる。女子は蝶やてんとう虫だったのに、クラスメイト役になり、アイドルのキャンディーズになっていく。かっこいい青年、きれいなお姉ちゃんのいい時期を、親戚のおばちゃんのように見守れる…ホント幸せなことです。

黒田さんが演劇の世界で生きていくきっかけは、何でしたか?

演劇を始めたきっかけは、高校の演劇部にいたクラスメイトに誘われたからですが、実は今回も演出助手や、衣装を担当してくれる所村佳子さんは、演劇部の一年後輩なんです。可児市に呼んでくださったアーラ前館長の衛さんは、私が金沢市民芸術村ディレクター時代、ドラマ工房アドバイザーをしていて、その御縁もありこちらに寄せて頂きました。いろんな縁はつながっていますので、いつの時も互いを尊重し楽しさを共有していくことが大切です。この作品を通して「家族の再生」「いのち」「友情」を観客の皆さまと共有できるよう頑張りたいです。

黒田さんが感じる演劇の一番の魅力はどんなところでしょうか?

先日、出演する子どもたちに言いました。私には「教えられること」と「教えられないこと」があると。演出ですから、「ここを直して…」と言うし、「こんな風に見えてるよ」など様々なダメ出しをします。でもそれを聞いて、自分の中で消化して表現するのは自分自身であり、自分が気づき、自分から発信しないと「やらせた」になってしまいます。子どもたちに技術は求めません。でも舞台上では自分ではない役として、本物として舞台にいてほしい。それが出来たら多分、舞台だけじゃなく、自分の人生も楽しんで生きられるように思うのです。自らが選び取り生きてほしいと願っています。

5回目の「キミナツ」、楽しみですね。

毎回そうですが100人の出演者に寄り添いながら言わば大縄跳びのようなお稽古です。瀬戸口さんが作った縄に、上田さんが七色の魔法をかけてくれた。その綱を舞台監督が握り、100人全員の誰ひとりコケないよう見守り、激励していきます。跳び方はいろいろありますが、全員で跳ぶことに意味があるのです。どうか今回も全員が無事に跳べますように…そして舞台のパワーが観客に届きますように…そう願っています。

取材/福村明弘  協力/フリーペーパーMEG

市民ミュージカル君といた夏

2026年
2月28日(土)18:30(開場18:00)
3月1日(日)14:00(開場13:30)
可児市文化創造センターala 主劇場
全席指定 2,000円 ※4才から入場可

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