ala Times articles

ala Times 特集記事

中村雅俊<俳優・歌手>

2026 年 05 月 13 日 (水)

秋田県能代市二ツ井町で開催されていた「きみまち恋文全国コンテスト」が発端となり始まったシリーズ「恋文」も今年で15回目の開催を数えます。今回は俳優の中村雅俊さんと真野響子さんの豪華ペアが2年ぶり2回目の登場を果たし、特別な想いが綴られた恋文を、朗読とピアノの即興演奏で紡ぎます。

2回目の登場となりますが、前回出演された2023年10月の公演で今も心に残っていることはありますか?

俺はテレビドラマや映画での演技や歌の仕事は数多く経験していますが、舞台での朗読というのはそれまであまり機会がありませんでした。ですから、実はかなり緊張していたんです。朗読といってもただ恋文を読むだけではなく、舞台袖からステージへと出ていく瞬間から演技が始まるんです。「恋文」を書かれた方を自分なりに想像しながら舞台へと向かうんですね。「演じる」といっても通常のお芝居とはタイプが異なりますので、とても難しかったです。本番の舞台で真野さんが導いてくださったり、新たな気付きがあったりもしました。ひとつの公演の中で恋文の数だけ演じますので、ひとりで何役も担当するのが興味深かったです。

恋文を朗読する上で大切にしたいことは?

一番は「伝えたい」という想いです。舞台では、俺と真野さんの朗読に加え、映像とピアノの即興が重なり合って客席の皆さんのイマジネーションを刺激します。一人ひとりの心に異なる物語が浮かび上がり、その場でしか生まれない空気が会場を包んでくれるはずです。そうした相乗効果で、特別な時間を過ごしていただけたら良いです。また、俺の個人的な想いとしては、今回は2回目ですから過度に緊張せず臨みたいですね。ただ、「緊張」というとネガティブな響きがありますが、必ずしもそうではないと思うんです。適度な緊張は集中力を高めてくれる、大切な感情だと思います。適度な緊張感を持ちつつもリラックスして取り組みたいです。

舞台でのお仕事には、どのような魅力がありますか?

役者、歌手、ナレーションなど、さまざまなお仕事をさせていただいていますが、どれも「表現者」という括りに入るのではないかと思います。ですから、どのお仕事においても、心の中にあるものを人々に伝えることがもっとも大切であり、そこにやりがいを感じます。俺が皆さんにお届けするものの全ては強制的なものではなく、受け取る方によって自由に感じていただければ良いと思っているんです。そういう柔軟さも魅力のひとつですね。例えば、この「シリーズ恋文」のテーマである「愛」は普遍的で、誰にとっても分かりやすい題材ですが、一つひとつの物語の受け取り方は100人いれば100通りあると思います。そうした寛容性がより豊かな時間を作り出すのではないかと思います。

もし今、過去の誰かに恋文を届けることができるとしたら、誰に何を伝えたいですか?

すぐには思いつきませんが……強いて言えば両親ですね。母は長寿で94歳まで生きましたが、彼女の人生を振り返ってみると果たして満足していたのか、今も気になるのです。自由奔放で、思うままに生きているように見えましたが、その真意は分かりません。ですから、恋文というよりは質問状ですね(笑)。父は俺が4歳のときに亡くなりました。きっと夢半ばで、俺達兄弟の成長を見届けたかったのではないかと思います。もし手紙を届けることができるのなら、元気でやっていることを伝えて安心させたいです。

お母様は夫を亡くされた後も力強く生涯を全うされたのですね。お母様の生き方は中村さんに影響を与えましたか?

そうですね、時々「これは母の血筋だな」と思うことがあります。母は常に前向きで、良い意味で楽天的。多くの人が大変だと感じることを、そうは感じない性格でした。芯が強いからこそ、そうして明るくいられたのだと思います。そうした性格や好奇心旺盛なところは、俺に受け継がれているように感じます。

もう1通、もし過去の自分に手紙を書くとしたら、いつ頃の自分に何を伝えたいですか?

中途半端だった大学時代の自分にもっとしっかりしろ、と言いたいですね(笑)。中学高校時代はバスケットボールに打ち込んでいましたから悔いはないのですが、大学時代は迷いがあったのか、少々中途半端だったように感じるのです。
俺は外交官になることを目標に大学に進学したのですが、英語劇のサークルで芝居をすることの楽しさを知り、のめり込んでいきました。

そこに現在の中村さんの原点があるのですね?

確かにそうですね。英語劇のサークルではキャストだけでなく、衣装や照明など裏方の仕事も皆で分担していましたから、そこには、仲間と舞台を作り上げる喜びがありました。四大学のコンペで賞をいただいたことがあり、達成感を覚えたのもその後の人生に大きく影響したと思います。演じることへの関心は益々高まっていき、大学在学中に文学座の研究生になりました。程なくして俳優デビューの機会をいただき、それが「われら青春!」でした。それからだいぶ月日が流れ、来年1月に公開される映画「五十年目の俺たちの旅」は「俺たちの旅」の50周年を記念した映画で、監督と主演を務めます。舞台を作り上げる喜びは当時も今も変わりません

シリーズ恋文vol.15にいらっしゃる読者の皆さんにメッセージをお願いします。

74歳になった今、残りの人生、限られた時間について考えることが増えました。そして、パートナーへの感謝の気持ちや、家族への想いなど、これまで歩んできた日々を慈しむ気持ちが一層強くなりました。今の年齢だからこそ伝えられることがあるように思います。「恋文」にはさまざまな歩みや想いが綴られています。そうした人生を疑似体験しつつ、ご自身がこれまで体験されてきたことに重ね合わせるなどして味わっていただけたらと思います

取材/向後由美 撮影/中野建太 協力/フリーペーパーMEG

シリーズ恋文vol.15

2025年
11月29日(土)・30日(日)各日14:00
可児市文化創造センターala 小劇場
全席指定 4,000円 25才以下2,000円

プロフィール

中村雅俊 
NAKAMURA MASATOSHI

1973年、慶應義塾大学在学中、文学座附属演劇研究所に入所。1974年、NTV「われら青春!」の主役に抜擢されデビュー。挿入歌「ふれあい」で歌手デビューし、売り上げが100万枚を超える。 今までに役者として、TV連続ドラマの主演数は34本。歌手としてもコンスタントに曲を発表し、現在シングル55枚、アルバム42枚をリリース。デビューから毎年行う全国コンサートも1500回を超える。 アーラには2年ぶり、2度目の登場となる。

一覧へ戻る