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石田泰尚<ヴァイオリニスト>
2026 年 05 月 13 日 (水)
神奈川フィルハーモニー管弦楽団のソロ・コンサートマスターを務める実力派ヴァイオリニスト・石田泰尚さん率いる「石田組」。魅力的なアンサンブルを生み出す、その秘訣を組長の石田さんと、組員の西谷牧人さん(チェロ ・愛知県立芸術大学准教授)にうかがいました。
情熱的かつ表現豊かな演奏で楽しませてくれる石田組。プログラムにはクラシック音楽のみならず、映画音楽やロック、ミュージカルの名曲など、幅広いジャンルの音楽が盛り込まれます。
石田 プログラミングに関しては石田組発足以来変わらず、「いろんなジャンルをやろう!」という方針です。ですから、例えばクラシック音楽は堅いイメージがあって苦手だという方にも楽しんでいただけるはずです。
西谷 どのジャンルの曲にも“ノリ”が生まれますので、僕たちの演奏を聴いていただければ、馴染みのないジャンルの音楽も好きになっていただけると思います。
石田 子どもから高齢者まで、幅広い層の方々に聴いていただき、音楽を楽しんでいただきたいと思います。
チケット完売が相次ぐ大人気の石田組ですが、どのような経緯で発足されたのでしょうか?
石田 新星日本交響楽団(2001年に東京フィルハーモニー交響楽団と合併)のコンサートマスターを務めていた頃、東京フィルの首席オーボエ奏者だった小林裕さんのアルバム制作で、ストリングスを担当することになったんです。メンバーを集めるところから任せていただいたので、思い切って男性奏者だけで編成してみることにしたんです。男同士、気兼ねなくやってみようという発想からでしたが、そのレコーディング風景が想像以上にカッコよく、印象に残りました。それ以来、「いつか男だけのアンサンブルをやってみたい」という思いを抱くようになり、ある時、ホールの企画担当の方に相談したところ、「面白そうだからやってみよう」と言っていただき、ついに実現したんです。2014年のことです。それが「石田組」の原点です。
公演ごとに“組員”が招集されるスタイルですが、メンバー選出はどのように?
石田 選出の基準は特に設けてはいませんが、僕のことが嫌いじゃない人(笑)、お互いにリスペクトし合える同志に声をかけています。そうした相性は演奏する上でも大事なことですが、ツアー中ずっと一緒に過ごすことになるわけですから、お互いのために重要だと思います。
西谷 私が初めて石田組で演奏したのは2016年なのですが、組員同士良好な関係を築けていると思います。そして、毎回少しずつ奏者が入れ替わりますが、変わらず石田組ならではの雰囲気が持続されているように感じます。
石田組といえば自由度の高いアンサンブルの中にも一体感が感じられる演奏が印象的なのですが、この雰囲気はどのように作られるのでしょうか?
西谷 やはり石田さんの存在そのものが大きく影響していると思います。石田さんが一音鳴らすとその場の空気が一変するんですね。そして、その音に込められた想いをメンバー全員が感じ取って、それに向かって心を一つにしていくんです。それが石田組特有の一体感に繋がっているのだと思います。
石田 基本的に、メンバーには各々自由に弾いてほしいと思っているので、リハーサルでも特に細かいことは言わないんです。決め事は最低限に留めて、もし仮に本番でそれぞれの方向性がバラバラになってしまったとしても、「俺が何とかするから!」という想いです。臆せず弾いてほしいですね。
西谷 その「何とかするから!」の対応力が尋常ではないんですよ。その安心感から、「石田さんについていこう」という気風が高まって、メンバー全員がひとつにまとまっていくのだと思います。
石田組の演奏の特徴はどこにあると感じますか?
石田 常に“前に前に”という姿勢で演奏するところでしょうか。テンポを速めに設定して、キレのある演奏を心がけています。また、こういった幅広い層に向けた公演は、曲と曲の間にトークを挟むケースが多いと思うのですが、次々と曲を演奏してノリを継続させるところも石田組ならではかもしれません。
西谷 だからこそ私は、石田組で演奏するときにはリスクをおそれて守りに入らないように気をつけているんです。常に攻めの姿勢で演奏するように心掛けています。
そもそも石田さんの演奏スタイルが、リスクを負いながらも表現を追求し、最大限にその曲の魅力を引き出すスタイルなので、メンバーもその方針に添って共に前進することが重要なのだと感じています。
これまで各地でたくさんの公演を行っていますが、特に印象に残っている公演は?
石田 もちろんそれぞれの公演に思い出がありますが、やはり昨年11月に行った武道館は別格で、クラシック畑の私たちにとって8300人ものお客さまの前で演奏するというのは特別な経験でした。それだけの人数になりますと、お客さまの盛り上がりも桁違いで、今も強く印象に残っています。
西谷 そうですね、全てが桁違いでしたね。でも面白いのは、それだけ僕たちにとって非日常的な公演だったにも関わらず、メンバー全員が驚くほど変わらずいつも通りだったことです。どんな公演であっても、石田組のスタイルは変わらない、という象徴的な出来事だったようにも思います。
アーラでの公演は、石田組にとって岐阜県初の公演となります!
石田 僕たちはいつも全力ですから! まずは会場に来ていただいて、生で石田組の演奏を聴いていただきたいですね。おじいちゃんにも、おばあちゃんにも、ぜひお越しいただきたいです。僕たちを応援してくださっているファンの方々の中には、各地の公演に足を運んでくださる方もいらっしゃるのですが、初回公演ですし、まずは一人でも多くの地元の方々に聴いていただけたら嬉しいですね。
取材/向後由美 撮影/三友鉄也 協力/フリーペーパーMEG
石田組コンサートツアー2025
2025年11月3日(月・祝)14:00(13:30開場)
可児市文化創造センターala 主劇場
全席指定6,000円 25才以下3,000円
プロフィール
石田泰尚 ISIDA YASUNAO
神奈川県出身。国立音楽大学を首席で卒業、同時に矢田部賞受賞。新星日本交響楽団コンサートマスターを経て、2001年神奈川フィルハーモニー管弦楽団ソロ・コンサートマスターに就任。以来“神奈川フィルの顔”となり現在は首席ソロ・コンサートマスターとしてその重責を担っている。これまでに神奈川文化賞未来賞、横浜文化賞文化・芸術奨励賞を受賞。結成時から30年参加するYAMATO String Quartet、自身がプロデュースした弦楽アンサンブル“石田組”など様々なユニットでも独特の輝きを見せる。2020年4月より京都市交響楽団特別客演コンサートマスターを兼任。2024年には石田組でNHK「あさイチ」に出演、日本武道館公演を行い8,000人以上を動員し大きな話題となった。2025年4月より横浜みなとみらいホール「プロデューサー in レジデンス」第3代プロデューサーに就任。使用楽器は 1690 年製 G.Tononi、 1726 年製 M.Goffriller。