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玉川太福 <浪曲師>
2026 年 05 月 13 日 (水)
新年恒例「かに寄席 初席」。今年は浪曲人気“復活”の旗頭として熱い視線を集める玉川太福が5年振りに登場。東京落語の大看板、「爆笑王」の柳家権太楼を筆頭に、当代随一の“聴かせる”噺家・柳家三三、唯一無二の新作の鬼才・瀧川鯉八ら豪華な面々と、おめでたい初笑いをお届けします。
昨年、浪曲師として余年ぶりに新宿・末廣亭で主任(トリ)を務められたのに続いて、今年も池袋演芸場で同じ大役を任せられました。明治~大正~昭和と、かつては「娯楽の王者」と言われていた浪曲に最近また注目が集まってきている気がしますが、まさにそのキーマンとなる存在です!
キーマンという意味では、“絶滅危惧職”であった講談の救世主となった神田伯山先生のような、芸はもとより人間性やキャラクターも広く大衆に魅力が伝わって、その人を通して講談自体の人気も広がるような存在はありがたいですよね。浪曲も演芸の中ではかなり地位が上がってきているとは思いたいのですが、昔のようなエンタメの中心だった時代にはほど遠い。 …というか、テレビもラジオもヒット曲もそうですが、今や老若男女がひとつのものを楽しむ世の中ではないので、全世代に届くのは難しいとしても、今まで全く浪曲を知らなかった人や興味のなかった人にも楽しんでいただけるものを提供できるように、それを目指して頑張りたいです。
初心者でも楽しめる「渋谷らくご」のステージや創作話芸ユニット「ソーゾーシー」での活動は、浪曲の間口を拡げるのに一役買っていますね。
それは可児市もそうですが、寄席の中に落語だけでなく浪曲も1本入れていただけるのが何よりもありがたいのです。今回も何で自分にまたお呼びがかかったのか、その意味をちゃんと理解してご期待に応えて、会全体を大いに盛り上げたいと思っております。
前回ご出演いただいたのは、エンタメ界がコロナ禍の影響で揺れる中、大規模改修を経てリニューアルオープンしたアーラで最初の主催公演となった、2021年の「かに寄席 初席」でした。あの時も柳家花緑師匠や三遊亭兼好師匠ら実力派が揃いましたが、今回もそれに負けない豪華な顔ぶれが集結します。
柳家権太楼師匠については、師匠の弟子で、私がいちばん最初に懇意にしていただいた噺家さんの柳家東三楼師匠(当時:柳家小権太)の話を聞いているとちょっと怖いイメージですが(笑)、やはり芸のスケールが大きい。大病からの復帰高座でご一緒した時も、4~50分の長講のネタを凄く嬉しそうに活き活きとやられていてまさに「爆笑王」というか “全身噺家”といった佇まいに圧倒されました。
柳家三三師匠は、私が浪曲師になる前から追っかけていた柳家小三治師匠の血をいちばん色濃く受け継ぎながらも独自の色に染め上げておられる。古典も最高ですが、動物園が舞台の「任侠流れの豚次伝」のような新作をやられても評価されるし、とにかく巧くて “聴かせる”ので心から尊敬しています。
瀧川鯉八師匠とは同じ「ソーゾーシー」のメンバーですが、とにかく新作しかやらないといういばら道をあえて貫いているのが素晴らしい。絶対受ける古典の鉄板ネタをひとつ持っていたら強みになるのに、常に新作で勝負するって並大抵じゃない。しかもただの新作じゃなくて、それこそ「鯉八以前」「鯉八以後」と謳われるくらい唯一無二の世界観を持っている。私にはまだまだ周りの評価が足りてないのではとさえ思います。
可児市の皆さんは“演芸通”の方も多く、浪曲を楽しみにされているそうです。前回の反応はかなり好評だったそうですよ。
嬉しいです! CDやYouTubeでも楽しめるけれど浪曲は迫力のある芸ですから臨場感が大切。私のやっている、会社の上司と部下の何気ない日常を題材にした『地べたの二人シリーズ』の「おかず交換」のような新作は、内容的にはバカバカしいかもしれないけれど、声の唸り方や三味線の演奏は古典の魅力そのままなので、ぜひ空気を震わせる生の音を会場で感じていただきたいです。
浪曲は、メロディのある「節」と台詞である「啖呵」、そして説明的な「語り」で構成された 音楽芝居だと勝手に思っているのですが、その絶妙なバランスとタイミングはどうやって決めるのですか?
新作志望でしたが、最初の2~3年はひたすら古典だけを練習しました。そのうちに肌感覚で「関東節」の浪曲の流れというか、ここで感情が高まってひとっ節入るとか、ここで唸るべき、唸らないべきとかが、何となく掴めるようになっていきました。それを踏まえて新作に取り組んだので、話の内容は荒唐無稽でも古典で学んだことが下地にあるんです。だから昔からのお客さんにも楽しんでいただけるのだと思います。
近年、太福師匠の「節」というか声が以前に比べてさらに豊かになってきたというか、聴いていて凄く心地いいと感じます。
ありがとうございます! もともと民謡をやっていたわけでもなく、音楽の素養も一切ないところから始めた道ですが、鍛錬を積み上げて時間を経ないとできない声と「節」があると信じています。かつてうちの師匠である玉川福太郎の声と「節」に引き込まれて、何なんだろうこの高揚感と言葉に尽くせない魅力の正体は ? ってショックを受け、その謎の答えが知りたくて入門したようなものなんです。自分はまだその半分のレベルにも達していないと思うので、まだまだ頑張らないといけないです。
それにしても、いつも傍らで三味線を弾かれている(※亡き福太郎師匠の妻で、玉川一門を支える “おかみさん”でもある)曲師の玉川みね子師匠もタダモノではないですよね。
映画でいうところの音楽監督というかそれ以上。舞台の上で私を自由に安心して唸らせてくださる存在で、一撥一撥の響きに重みと説得力がある。打ち合わせとか殆どしないのに以心伝心なんです。そんな我々の掛け合いにも注目して、楽しんでみてください。
取材/東端哲也 撮影/中野建太 協力/フリーペーパーMEG
かに寄席 初席
2026年
1月17日(土)14:00(開場13:30)
可児市文化創造センターala 主劇場
全席指定 4,000円 25才以下2,000円
プロフィール
玉川太福 TAMAGAWA DAIFUKU
1979年生まれ。新潟県新潟市出身。2007年3月、二代目玉川福太郎に入門。2013年10月、木馬亭にて名披露目興行。年間50公演を超える独演会に加え、近年では新宿末廣亭など落語の定席にも出演。「天保水滸伝」「清水次郎長伝」といった古典演目を継承する一方、 新作浪曲にも積極的に取り組み、自作の「地べたの二人」シリーズの他、映画「男はつらいよ」浪曲化、異ジャンルとの共演など、幅広く活動を展開している。