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貫地谷しほり<俳優>

2026 年 07 月 23 日 (木)


初演以来700回以上も上演されている井上ひさしの人気作『頭痛肩こり樋口一葉』。2022年の公演で初めて一葉を演じた貫地谷しほりが、出産休養を経て再び挑む。母となったことで、貧困のなか一家を支えた一葉により深くシンパシーを感じるようになったという貫地谷。 舞台の上でまさに樋口一葉を生きる。

4年ぶりの『頭痛肩こり樋口一葉』。再び樋口一葉を演じられるにあたってのお気持ちから聞かせてください。

前回は女流作家・樋口一葉を演じようとして、「作家になるんだ!」という一つの希望に向かっていたように思うのですが、4年という時間が経ち、その間に私にも母親になるという変化があったことで、前回よりも地に足の着いた一葉を演じられるのではないかなと思っています。若くして一家を背負い、貧しい生活にあえいでいた一葉の、「どうにか食べていかなきゃいけない」「私が成功しなければみんな死んでしまう」という切実さが、もっと表現できるのではないかなと。

母になられてどういう変化がありましたか。

日々目を覆いたくなるようなニュースが本当にたくさんあるなかで、以前だったら「こんなひどい世界があるなんて…」と思っただけだった気がするんですけど、今は、「いろんなことがあるけど、それでもこの世界で生きていかなきゃいけないんだ」と思うようになっています。一葉も、明日何を食べればいいのかという暮らしをし、周りにも悲惨な女たちがいながら、そのことを見て書いて、必死で道を探していった。そこは身につまされるようになったといいますか。その強さは母となった自分と共通するのかなと思います。

井上ひさしさんは日本のシェイクスピアと言われているくらいですから、まず台詞にリズムがあるなと思います。その耳心地の良さのなかに、温かさがあったり、面白おかしいけど悲しかったり、悲しいけど面白おかしかったりする。この舞台に登場する女性6人、みんな本当に悩んでいるんです。お金がないとか、夫が帰って来ないとか、死んでしまいたいというくらい苦しんでいる。けれども、井上さんのお芝居って、みんなで一生懸命に演じているうちに、この6人のコミュニティが素敵に見えてくるようになっているんです。だから、生きていて辛いなと思う瞬間ってどんな方にもあると思うんですけど、このお芝居が、今はこんなに辛いけど後には笑えるかもしれないと思えるきっかけになったら嬉しいなと思います。さらに一葉は、女に勉強はいらない、女は家にいるもの、働くなんてとんでもないという明治の時代に生きていて、自分でも「女はかくあるべし」というものにとらわれているんですけど、そういう自分を縛りつけているものって今も何かしらあったりすると思うんです。女性が当たり前に働ける時代になった今でも、人から言われることで。なので、一葉がそこから解放される瞬間の台詞は、私自身にも尽き刺さります。

ほかの5人の女性たちもぜひ紹介してください。

一葉の母の多喜(増子倭文江)はまさに女はこうあるべきだといつもケンケンしていて、妹の邦子(瀬戸さおり)は健気に一生懸命一葉を支えて、お鑛さん(香寿たつき)は女性のあるべき姿を地で行きながらも夫に裏切られて情念を爆発させ、お八重さん(岡本玲)は人生の酸いも甘いも経験して、それぞれに現実は地獄なんです。成仏できない幽霊の花蛍さん(若村麻由美)も含めて。でも、最後まで生き残る邦子以外、あの世に行くとみんな解放されて楽しそうなんです(笑)。このお芝居の謳い文句として「死ぬのが怖くなくなる話」というのがありましたけど、死というのは自然なものなんだなと、私もこのお芝居を通して感じましたし。みんながあの世から邦子を見守るように、私のこともひいおばあちゃんたちが見守ってエールを送ってくれているんだろうなと思っています。

演出は栗山民也さん。前回印象的だったこと、再びのタッグで楽しみにしていることを教えてください。

栗山さんのおっしゃるちょっとしたひと言でハッとさせられ、ガラッと芝居が変わっていくということがよくありました。いろんなことを台本に書き込みましたけど、なかでも大事にしたいと思ったのは、この時代がいかに苦しく大変だったかということ。本当にその時代を生きているように見せなければならないなと、今回も思っています。もしかしたら観てくださる方も、時代のことや樋口一葉のことを何となく頭に入れてご覧いただくと、さらに面白くなるかもしれないですよね。美術館に行ったときにその絵の背景を知っていると違った見方ができるのと同じで。一葉の「人間」が見えたり、演出家が伝えたいことが見えたりすると、より楽しんでいただけるんじゃないかと思うので、そういうふうに皆さんを惹き付けられる舞台にしなければいけないなと思います。栗山さんのたくさん引き出しのあるタンスを借りて(笑)、一葉の新たな面を見つけながら。

最後にメッセージをお願いします。

こうして旅巡業をして全国の皆さんに観ていただけるのは本当にありがたいことだと思っています。私にとって劇場に行くというのはウキウキすることなんですけど、皆さんにも楽しみに来ていただけるように精進しますので、ぜひ劇場にお越しください。

取材/大内弓子 写真/安田慎一 
スタイリスト/mick(Koa Hole inc.) メイク&ヘアスタイリング/北 一騎(Permanent) 
協力/フリーペーパーMEG

こまつ座『頭痛肩こり樋口一葉』

2026年
9月14日(月)14:00~(13:30開場)

可児市文化創造センターala 主劇場

チケット発売日
7月25日(土) 09:00~
※電話予約は発売日の翌日9時から

料金
全席指定7,000円
25才以下3,500円
※未就学児入場不可

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