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広上淳一<指揮者>

2026 年 05 月 13 日 (水)

2026年もクラシックの名曲と共に華やかな年明けを。6度目のアーラ登場となる人気マエストロ・広上淳一とお馴染み新日本フィルハーモニー交響楽団が、年の初めから皆さんに至福の時間をお届けします。

マエストロとニューイヤー・コンサートはアーラでは定番の組み合わせですね。前回は2020年、ちょうどコロナ禍直前の1月でした。

もう6年も前になりますか。コロナ禍では老舗の旅館が倒産したり飲食店なども大打撃を受け、我々の業界も存亡の機に瀕しました。美味しいものや楽しい時間を提供する仕事が危機的状況に陥ったあの日々を、決して忘れてはいけないと思います。可児市の皆さんにはいつも温かく迎えていただいておりますが、前回のコンサートでも主劇場の美しい響きと会場の盛り上がり、少し早めに伺ってレストランで食べた素敵なランチの味を今でもよく憶えていますよ。

今回のプログラムでは先ず、チャイコフスキーの3大バレエ組曲が目を惹きます。

古典の最高傑作《白鳥の湖》、絢爛豪華な大作《眠りの森の美女》、そしてクリスマスが舞台の一大ファンタジー《くるみ割り人形》といった、いずれもバレエ芸術の地位を向上させた有名な作品を彩った名曲から、よく知られたメロディばかりを選りすぐった、まるでの“お節料理”ような絶品メニューです。皆さんにとってはとても耳馴染みのよい楽曲ばかりですが、演奏する側としては結構、難易度も高いので“厨房”は大忙し(笑)。とにかく聴き所が満載ですので、ビギナーから熱心なクラシック・ファンまで、どなたにでも満足していただける“シェフ”お薦めの自信作なのは間違いありません。

もちろん“ワルツ王 ヨハン・シュトラウス2世によるポルカ《雷鳴と電光》を始め、ワルツ《春の声》や《美しき青きドナウ》など、ウィーン・フィル恒例の本家ニューイヤー・コンサートで定番の人気楽曲も盛り沢山ですね。

2025年も庶民の暮らしは相変わらず苦しく、国際情勢をみても暗いニュースばかりが目につく一年でしたが、せめて年明けくらいは日頃の憂さを全て忘れて、会場で皆さんが優雅かつゴージャスな雰囲気に心ゆくまで身を委ねていただけるように頑張ります! ウィーン・フィルのニューイヤーにもバレエが付きものですので、チャイコフスキーとウィンナ・ワルツの組み合わせも、なかなか良いのではないでしょうか。

ウィンナ・ワルツは私たちの思う“三拍子”のワルツとも微妙に違うと言われていますが、演奏は難しいですか?

そりゃ難しいです(笑)、でもそのあたりも皆さんはあまり深く気にせず楽しめばいいのです。( “ワルツ王” として名声を確立した後でシュトラウス2世が手を染めたオペレッタの分野で、最初に成功を収めた)名作《こうもり》の序曲も今回演奏しますが、こちらもいきなり冒頭からノリノリでスタートする粋な楽曲なので、存分にエキサイトしていただけたら幸いです。

相性抜群の新日本フィルとの共演ですので、マエストロも心強いのではないでしょうか。

おっしゃる通りです! もう何度も一緒にやっていますが、それぞれのプレイヤーに個性があって生き生きとした演奏を披露しつつ、全体でもうまくまとまって一体感を出すのもお手の物という、非常に機動力の優れた素晴らしいオーケストラだと思っています。それに佐渡裕くんが(2023年に第5代の)音楽監督に就いてから、さらに親しみやすさも深まって、本拠地であるすみだトリフォニーホール共々、地元・墨田区の人々により愛されている気がします。それは可児市の皆さんも同じではないでしょうか。アーラも新日本フィルにとってはもうひとつのホームのような場所だと思うので。そんなアーラでの公演に、また私をご指名していただきとても光栄です。

曲と曲とを繋ぐ田添菜穂子さんの司会(MC)とマエストロへのインタビュー・コーナーも名物ですね。

新日本フィルのことを知り尽くしていますから、アーラのニューイヤーには欠かせない存在です。

マエストロ自身は今年1月からマレーシア・フィルの音楽監督に就任され、オーケストラ・アンサンブル金沢とシェフを兼任するほか日本フィル、札響、そして京響にもポストを持つなど多忙な活動を続けつつ、東京音楽大学では指揮科の教授として教育活動にも情熱を注がれています。2025年はどんな年でしたか? そして来年の抱負などもお願いいたします。

この歳になってまた新しいことを始めたりしてたいへんな一年でしたがとても充実していましたよ。それに6月には山田和樹くんがベルリン・フィルを指揮して鮮やかにデビューを飾ったり9月には若手指揮者の登竜門として知られるフランスのブザンソン国際若手指揮者コンクールで米田覚士くんが見事優勝を果たしたり、シーンの後輩たちからも嬉しいニュースが届けられて、励みにもなりました。日頃から音大生や若い世代の演奏家たちと接する機会が多いのですが、みんなとても優秀で将来の活躍を期待せずにはいられません。彼らや彼女たちがこのまま夢を追いかけることができるように、今後も私たちの世代にできることはないか模索し手助けをしたい。未来に何かを“残したい”というのはエゴが強いので何か“伝えたい”という言い方になりますが、来年も引き続き精一杯手を尽くしてみたいと考えています。まあ綺麗事じゃなく、人生には“清濁併せ呑む”ことが必要なのですが“濁”ばかりじゃつまらない。とりわけ年始はおめでたい気分で、皆さんとご一緒に一年をスタートしたいので、ぜひこのコンサートにお越しください! 新日本フィルとお待ちしています。

取材/東端哲也 撮影/伊藤晴世 協力/フリーペーパーMEG

新日本フィルハーモニー交響楽団 ニューイヤー・コンサート2026

2026年
1月12日(月・祝)16:00(開場15:30)
可児市文化創造センターala 主劇場
全席指定 7,000円 25才以下3,500円

プロフィール

広上淳一 HIROKAMI JUNICHI

尾高惇忠にピアノと作曲を師事、音楽、音楽をすることを学ぶ。東京音楽大学指揮科卒業。26歳でキリル・コンドラシン国際指揮者コンクールに優勝。ノールショピング響、コロンバス響、京都市響等で数々のポストを歴任。コンセルトヘボウ管、イスラエル・フィル、ロンドン響、サンクトペテルブルク・フィルなどへも客演。現在、マレーシア・フィル音楽監督、オーケストラ・アンサンブル金沢アーティスティック・リーダー、日本フィル フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)、札幌交響楽団友情指揮者、京都市交響楽団広上淳一。東京音楽大学指揮科教授。2024年第75回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

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