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ala まち元気プロジェクトレポート

あーとま塾2025

2026 年 03 月 11 日 (水)

2026年2月18日(水)・19日(木)の2日間にわたり、可児市文化創造センター(ala)にて「あーとま塾2025」を開催しました。

今年のテーマは「文化芸術 × Well-being」。

国の文化政策において「Well-being(ウェルビーイング)」の重要性が謳われる中、現場で私たちが肌で感じている価値を、いかにして社会や行政に伝わる言葉へと翻訳し、評価指標として確立できるか。全国から集まった41名の参加者と共に、その手法と哲学を探求しました。

■ Day1:身体で掴む「実感」

初日は、インプロバイザーでありWell-beingの研究者でもある絹川友梨氏によるワークショップ「Well-beingについて知り、体で考える」からスタートしました。

「評価」というと、どうしても頭で考えがちですが、まずは身体を使って「ここにいていいという安心感」や「他者とのつながり」を体感することに重点が置かれました。初対面の参加者同士が、ワークを通じて心理的安全性の高い関係性を築いていくプロセスそのものが、劇場が地域で果たすべき役割の縮図となっていました。

■ Day2:現場の実践と理論の架橋

2日目は、4名の講師によるレクチャーとクロストークが行われました。

1. 衛 紀生 氏(文化政策/劇場経営アナリスト)

「人間の安全保障としての文化芸術」と題し、文化芸術を単なるエンターテインメントではなく、社会的孤立を防ぐ「生命維持装置(Vital Industry)」として再定義しました。阪神淡路大震災やコロナ禍の教訓を踏まえ、劇場は「しがらみのないコミュニティ」を育むプラットフォームであり、その公益的価値を社会へ伝えていく「創客」が必要であると力強く語られました。

2. 松浦 正和 氏(可児市文化創造センター 職員)

「現場におけるWell-beingの実践」として、アーラが取り組む市民参加事業や「まち元気プロジェクト」の事例を報告しました。不登校の児童生徒や障がいのある方が、劇場での活動を通じて自己肯定感を回復していく具体的なエピソードは、数値化できない「人生を価値あるものにする変化」の実証として共有されました。

3. 渡邊 淳司 氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

「Well-beingとISO推進」では、Well-beingを固定的なゴール(名詞)ではなく、日々のプロセス(副詞=Well-beingに生きる)として捉える視点が提示されました。結果(アウトカム)だけでなく、どのようなプロセスを経たかを重視し、自分たちのコミュニティで大切にする価値を対話によって決めていく「環境のデザイン」の重要性が語られました。

4. 柴田 英杞 氏(全国公立文化施設協会 アドバイザー)

「文化政策と指標の戦略的活用」では、評価とは「説明責任(アカウンタビリティ)」を果たすためのコミュニケーションであるという本質が解説されました。行政システムにおける数値評価の必要性を踏まえつつ、それを補完する定性的なエビデンスをどう積み上げ、社会からの信頼を獲得していくか。政策と現場をつなぐための戦略的な視点を学びました。

■クロストーク:政策と現場をつなぐ

最後に行われたクロストークでは、講師陣と参加者が車座になり、「現場の実感をどう政策につなげるか」について白熱した議論が展開されました。

一方的な評価ではなく、ステークホルダーと共に価値を創る「参加型評価」の可能性や、社会のインフラ(土壌)としてのWell-beingのあり方など、明日からの実践に向けた多くの示唆が得られました。

アーラでは、今回の議論を糧に、次年度以降も「現場発」の新たな評価指標のあり方を模索し、発信を続けてまいります。

(創造事業課 半田)

日  程

2026.2.18・19

会  場

可児市文化創造センター アーラ 音楽ロフト

実施回数

年1回(2日間)

参加人数

41名

講師

絹川 友梨
インプロ・ワークス株式会社代表取締役/東京大学大学院学際情報学府工藤和俊研究室

衛 紀生
劇場経営・文化政策・アーツマーケティング アナリスト/早稲田大学文化推進部 参与

渡邊 淳司
NTTコミュニケーション科学基礎研究所人間情報研究部上席特別研究員/WELL-BEING TECHNOLOGY 展示会 実行委員長

柴田 英杞
文化庁第23期文化政策部会委員/ (公社)全国公立文化施設協会アドバイザー/ (独)日本芸術文化振興会前プログラムディレクター(演劇・劇場)

主  催

(公財)可児市文化芸術振興財団

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