Event report
公演レポート
可児歌舞伎公演『三世観可児白浪十人男(さんぜみるかにのしらなみとにんおとこ)』
2025 年 06 月 04 日 (水)

売り切れ必至は常のことながら、今年はなんと配布開始30分で配布終了。上演はまさかの豪華三本立て、想定外の「こども歌舞伎」に、白浪ならぬ「公職五人男」、締めにはたっぷりと演じ上げる「傾城阿波の鳴門」。各幕で飛び交う声援とおひねりの波に、ここぞとばかりに熱気で返す役者たち。カーテンコールでは万雷の拍手の中、大盗賊の首魁を演じた可児市長から、お集まり頂いた皆々様へのお礼のご挨拶。一同深々と頭を下げたところへ、緞帳が下りる。やっと解かれた緊張と、大きな満足感から、参加者みな満面の笑み。ここに来るまで足かけ半年、いやあ、本当に、大変な道のりでした……。
「可児歌舞伎(同好会)」をご存じでしょうか?事の起こりは平成8年、廃業になった衣裳屋の貸衣裳が可児市に寄贈されたことから、その衣裳の整理や歌舞伎の勉強会が始まり、平成12年に「可児歌舞伎同好会」が結成。以来、団体名を「可児歌舞伎」と改めながら、本職の指導を受けつつ公演活動を続けてこられました。昨年(2024年)は、折しも岐阜県での国民文化祭開催、これを受けて、県を挙げて各地で「地芝居・伝統芸能フェスティバル」の公演を行うとあって、可児歌舞伎も上演参加を決めました。
この大祭り、ただの公演では面白くないと、市民参加も募集して、可児市の著名人も舞台に引っ張り上げて大いに盛り上げようと企んでいたところ、豈図らんや、小学生から高校生まで幾人かの勇気ある子どもたちが名乗りを上げたではありませんか。この機を逃す手はないと、あれこれ考えた結果決まったのが、「白浪五人男・こども版」の追加上演でした。もともと、勢揃いの一場だけなら短い演目、いっそ二つ続けてやってしまえと。折角興味を持ってきてくれた子どもたちに、大いに楽しんでもらおうではないかと。

覚悟が決まったはいいが、さあ、ここからが大変。普段はお師匠さんの指導を受けながら舞台をやっていた身から、素人の大人たちはおろか、元気な子どもたちまで、二演目分の指導を自らやることに。加えて自分たちの演目の稽古も。当初は月に二回もやればいいかと考えていた稽古も、やっぱり毎週やることになり、公職五人男の方々は元より多忙の身を削っての稽古、子どもだって今どきはあれこれ忙しい、中々全員勢揃いといかないながら、何とかセリフを入れ、振りを入れ、時に師匠の監修も受け、少しずつ仕上げていく。
そうそう、道具や衣裳、カツラだってこども用を用意しなければなりません。大道具も合わせて、あれこれ手配に天手古舞になりながらも、本番までの舞台を整えていきます。
実は、出演者全員が初めて揃ったのは本番前日、最後の舞台稽古の時でした。本当に、可児歌舞伎代表の加藤富貴子さんの心配は計り知れないものがあったと思います。しかし最後の通し稽古を終えたとき、彼女の顔は少しホッとした、そんな表情を浮かべていました。
「なんとかこれを、未来につなげていきたい」その一心で、やり通したこの舞台。末永く、みなさまのご記憶に残るものとなれば、これ幸いと存じます。
事業制作課 中尾

日程
2024年11月3日(日)14:00
会場
可児市文化創造センターala 小劇場
出演
公募市民、可児歌舞伎 ほか
上演演目
「白浪五人男・こども版」
「白浪五人男・おとな版」
「傾城阿波の鳴門」
主催
可児歌舞伎
共催
「清流の国ぎふ」文化祭2024可児市実行委員会
協力
(公財)可児市文化芸術振興財団