文学座おでかけ朗読会「走れメロス」

2022年07月01日

芸術と出会い、人と出会う演劇体験

行く先々の学校で、実際に生徒さんたちに聞いてみたところ、可児市内の中学2年生は、その殆どが「アーラ」を知っていて、行ったことがあるということでした。中には学校や習い事の発表会などで、舞台に立ったことがあるという子も少なくありません。しかし、アーラで生の舞台を観たことがある子は、あまりいませんでした。そんな子たちが「演劇」という芸術、「俳優」という人間に出会うことができる機会を提供するのが、この「文学座おでかけ朗読会」です。この出会いが彼らの人生の実りをより豊かにするものであるよう祈りながら、おでかけしてまいりました。

今年の朗読作品は、太宰治の『走れメロス』。生徒にとって身近な作品を読んで欲しいという先生からの要望があり、聴き手となる中学2年生の国語の教科書に掲載されているこの作品に決まりました。いきなり「メロスは激怒した」で始まる熱い感情が迸るこの作品を朗読してくれたのは、文学座の佐川和正さん。力強く響き渡る佐川さんの声に、生徒たちは作品の世界にグッと引き込まれている様子でした。朗読終了後の質問コーナーでは、初めて生で、間近で触れた、プロの俳優の本気の読みに、驚き、魅了され、興味を持った子どもたちから「どうやったらそんな声が出せるんですか?」「演じ分けがスゴイ!」「これまで聴いた朗読とは全然違いました!」「かっこよかったです!」などなど、俳優さんへの質問や感想をたくさんいただきました。また、先生からは「教室で教科書の朗読CDを聴かせている時とは、生徒の表情が全く違った。正直、こんなに集中して聴いてくれるとは思っていなかった」という感想もいただきました。先生にとっても、子どもたちの新たな一面と出会うことができる機会となっていたようです。

映像技術とともにIT技術が進化・普及し、更にVR、AIも発達してきた現在。コロナ禍も相まって、実演芸術の存在価値、意義が改めて問われています。単純な情報の交換だけならデジタル機器等によりサッと済ませてしまえる環境の中で、わざわざ空間と時間を共有して相対することでしか得られない、出会えないものがあります。それに気付くきっかけとして、この朗読が、演劇があれば良いと思います。

事業制作課 中尾


日 程 2021.10.19~10.22(計6回)
会 場 中部中学校、広陵中学校、蘇南中学校、東可児中学校
集 客 780人
出演者 佐川和正(文学座)
協 力 可児市教育委員会