Special 「かに寄席 納涼」林家たい平インタビュー
夏の定番「かに寄席 納涼」。 お茶の間の人気者が アーラに再登場。
夏の定番「かに寄席 納涼」に日本テレビ「笑点」の大喜利メンバーとしてもお馴染み、落語会でも幅広いファンをとりこにしている名人が登場。夏の暑さ残る季節に、アーラが名人の話芸で涼むひとときをお届けします。
-前回アーラに出演していただいたのは、2012年1月の「かに寄席 初席」(※他に桂平治[現・桂文治]、立川生志、桂吉弥というメンバー)で演目は、花魁がしつこいお客を自分が死んだことにしてあしらおうとする噺「お見立て」でした。
11年ぶりということになりますね。今回もその時にいちばん皆さんに喜んでもらえるような噺を用意しますのでご期待ください! 近年はYouTubeなどでも気軽に楽しんでいただけますが、生のライヴで聴く落語って凄く良いものですよ。自分一人だけじゃなくて、まわりからいろんな人の笑い声が聞こえてくる空間に身を置くことがどんなに幸せなことか、コロナ禍を経験した私たちだからこそ心の底から実感できると思います。特に「かに寄席」の場合は会場に顔見知りの方も沢山いて”あの人、ふだんは見せないあんな大声で笑ってた”とか、地元ならではのいろんな楽しい発見もありそう(笑)。SNS上の言葉だけで”炎上”したりする今の世の中ですが、わからないことがあればすぐ近所のご隠居に聞きに行ったりするような、昔ながらのコミュニケーションや人間関係が生きている落語の世界を、ぜひ若い世代の方にも知っていただきたいのです
-師匠ご自身も、落語の世界に出会ったのは大学生からだったとか。
そうなんです。こんな面白いものがあるのに知らなかった、それまでの自分の人生を悔いた程の衝撃でした。それで、まだ私と同じように落語と出会っていない人にこの魅力を伝えるには自分が落語家になって、伝道師のように架け橋となるのがいちばん手っ取り早いやと思ってこの道に入ったのです。喧嘩したり助け合ったり、ちょっとバカなことを真剣にやったり、人間味にあふれた愛すべき人がいっぱい登場する落語にふれて笑うことができれば、たとえ辛くて悲しい時や失敗した時にも人生が大きく変わるはず。まだ観たこと聴いたことがないという一人でも多くの方にそのことを教えてあげたくて、自分はその”入り口”になろうという想いでずっと続けてきました。
-“入り口”として、落語家のイメージを全国区で定着させた「笑点」の果たす役割も大きいですね。
とてもありがたいことです! 落語を知らない方にも「笑点に出てる人が、どんなことやるんだろう?」って興味を持ってもらえる。それだけに責任重大で、僕がレギュラーになった時に三遊亭圓楽(5代目)師匠から言われた「落語がちゃんとできないと大喜利メンバーは務められないよ」っていう言葉をいつも肝に命じて研鑽を積んできました。つまり「笑点」は落語という商品のショーウインドーだから、それを見てお店に入ってくれたお客さんに最高のものが提供できないと、もう二度と来てくれなくなる。だからそこは「心しておやりなさい」ってことなんです。それを古くからのメンバーはもちろん、自分より後に加わった桂宮治さんも新しく入った春風亭一之輔さんも心得ている。それであんな素敵な番組が長年放送されているって素晴らしいことだと思います。
-では今回の「かに寄席 納涼」メンバーについて師匠から一言で紹介をお願いします。
【桃月庵白酒】…高座姿も噺家然としていて、座っているだけでみんなを笑顔にする。実力も飛び抜けていて、バリバリの古典落語をやってもしっかりと自分のカラーを付けられて、ぐっと引き込んでしまう。僕のお客さんの中にも、彼の噺をまた聴きたいという熱心なファンが多いです。
【柳家わさび】…若い世代ならではの新しい感覚を持っていて自由自在。絵も上手だし才能豊かで、独創的な新作づくりも頑張っている。この先5年後、 年後とどんどん変わって行きそうな予感がして、本当に今後が楽しみな存在です。
【春風亭かけ橋】…前座の時からいつもニコニコして人懐っこい。落語の登場人物のようにそそっかしいところもあるけど、何にでも一生懸命なので憎めない(憎めないって芸人にとって大事な要素だと思う)。いろいろと苦労したはずなのに全然気にしてないところも好きです。これからもぐんぐん伸びて欲しい若手の有望株。
-最強のメンバーです!
当日はこの4人の組み合わせだからこそ醸し出せる“寄席”の雰囲気をご堪能ください。野球の打順と同じで前の打者次第で何が起きるかわからない(笑)。自分はこの中では最年長者になりますが、その場の状況にあわせてあっちに行ったりこっちに行ったり、いつまでも”青いなあ”と皆さんに思っていただけるような 青春の芸 を披露できたらと思っております。
-可児の皆さんも8月が今から待ち遠しいはずです。
同じく!アーラのように舞台芸術を受け入れる文化がしっかり整っていて、音楽でも演劇でも落語でも、生のステージを観る楽しみを知っているお客さんの前に立てることは、こちらにとっても大きな喜びです。そういう場所では僕らの実力が何倍にも大きくなる。出演者と客席が同じ空間を共有して、お互いに対話しながら共にひとつの舞台を創りあげることができるなんて最高ですね。長年「かに寄席」を続けてきたアーラだからこそ実現できる贅沢な時間だと思います。初めての方にもそれに加わって一緒に体験していただけたら嬉しいです。
取材/東端哲也 撮影/中野建太 協力/フリーペーパーMEG