Event report
公演レポート
【たけとりKAGUYA】演劇ライターによる観劇レビュー
2026 年 08 月 29 日 (土)

演劇ライター大内弓子さんによるala welcome theatre『たけとりKAGUAYA』の観劇レビュー
可児市文化創造センターalaが始めた“ala welcome theatre”。第一弾『たけとりKAGUYA』の上演がスタートした。このシリーズの着想のもとになったのは、イギリスで毎年上演されている「パントマイム」と呼ばれる家族向けの舞台。誰もが知るイギリスの童話をもとに、歌やダンス、観客参加などを取り入れた笑いあふれるその舞台は、多くの人にとって初めての演劇体験となり、大人になるとまた家族と訪れるものになっているそうだ。そんなふうに日本でも世代を超えて演劇の楽しさを繋いでいくものができたらというalaの思いに応えた作・演出の佃典彦。「竹取物語」を題材に、かぐや姫が残した不老不死の薬をもしも竹取の翁が飲んでいたら……という発想から、オリジナルの物語を生み出した。
舞台は未確認生物が発見されたところから始まる。科学員が調べると、その生物の推定年齢は1146歳。2026年に生きている竹取の翁だったのである。科学員たちは、今から彼に聞いたかぐや姫の話をしようと歌い、パッと昔の村人に早替り。科学員と村人を演じる3人(松井真人、小玉雄大、川合耀祐)は、村女、村の子、かぐや姫に求婚する貴族など、その後も様々な役を演じるのだが、そのたびにトリオ漫才のような絶妙な掛け合いで笑わせていく。瞬時に別の人物に変わったり、一人が何役も演じたり、冒頭から演劇ならではの演出の面白さにあふれている。

かぐや姫にも演劇の楽しさは満載。原作同様あっという間に育ち、村の子とかくれんぼをしている間に、見目麗しき姫になっている。マントを纏って階段から歌い現れるその姿を見れば、宝塚歌劇団出身の光月るうがその役を担っていることに誰もが納得するだろう。片や、竹取の翁を演じるのは野添義弘。勇ましくワガママなかぐや姫に振り回される姿が何ともチャーミングで、2人のやりとりにも笑いが起きる。ちなみに、このかぐや姫は尖った大きな耳を持っていて、かぐや姫が歌うときには、観客も事前に作成した自分用の耳をつけたり、竹の棒を叩いて拍子を取ったり、一緒に楽しむことができる。求婚されたかぐや姫が希望するものを持ってくるよう言い渡す場面では、貴族が客席を探して観客をステージに上げる一幕も。大人も子どもも巻き込まれることを楽しんでいる。


かぐや姫が現代を象徴しているのも面白い。スマホで遊び買い物をする姫に対し、竹とんぼを作ったりしながら、かつての生活や一緒にいることの楽しさを見せていく竹取の翁。現代社会への風刺もチラリ覗く。さらに、かぐや姫はある使命を持って地球にやってきている。月では不老不死の薬が開発されたために人口過密となり地球侵略が目論まれ、クーデターによって罪人にさせられたかぐや姫がその任務を背負わされていたのである。侵略が始まったときかぐや姫と竹取の翁がどんな行動を取るのか。争いが続く今の地球の問題についても考えさせられる。

日本にも、昔話や伝説、民話などが数多くある。それを掘り下げ、新たに解釈し、アレンジしていくことで、今に生きる物語として多くの人に伝わるものとなっていくだろう。しかも、それを演劇で届けるのである。目の前にいる役者たちの息遣いを感じながら、参加し、その世界に入り込んでいく。観客にとって、なかでも子どもたちにとってそれは強靭な体験となり、必ずや心に刻み込まれるはずだ。alaがこれからどんな物語を今に見せてくれるのか、子どもたちが何を受け取って育っていくのか、期待せずにいられない。
文=大内弓子
(大内弓子 プロフィール)
ライター。演劇、映画、ドラマなど、エンターテインメント作品のインタビュー、レビューなどを執筆。おもな媒体は、フリーペーパー「MEG」、雑誌「BEST STAGE」「TVガイドPERSON」「J Movie Magazine」「婦人公論」、演劇パンフレット、チケットぴあWEB、NHK大河ドラマ・連続テレビ小説ガイドなど。
日 程
2026年7月18日(土)~24日(金)
会 場
可児市文化創造センターala 小劇場
作・演出
佃典彦
出 演
光月るう、野添義弘、松井真人、小玉雄大、川合耀祐、栗木健
主 催
(公財)可児市文化芸術振興財団