Event report
公演レポート
市民ミュージカル「君といた夏」
2026 年 03 月 01 日 (日)
ala大型市民参加公演・第15弾・市民ミュージカル『君といた夏』が、2026年2月28日(土)、3月1日(日)、上演されました。今回で5回目の上演となる本作ですが、公募により集まった101人の市民キャストがそれぞれの役を演じきり、2日間、満場のお客様に2025年度版〝わたし達の″『君といた夏』をお届けしました。

文学座の俳優であり作家の瀬戸口郁さんによる本作は、映画「スタンド・バイ・ミー」をモチーフに、昭和49年の可児を舞台背景としています。2012年3月の初演の2年前から実際に可児のまちを歩き、調べ、当時の世界観が登場人物の台詞や歌詞、動作に描かれています。

長嶋茂雄の引退、オイルショック、トイレットペーパー騒動が起きた時代、自然豊かで名古屋のベッドタウンとして人口が増え始めている、人口わずか3万人の小さな町の物語です。
マコト、ミノル、カンジ、ミツオ、小学6年生の同級生4人は、それぞれ家族の問題を抱えながらも元気いっぱいいつも一緒に遊んでいました。そこに新たに転校生のヒロミが加わり、連絡が途絶えているというヒロミの友人・トモコに会うために名古屋を目指す、徒歩での冒険が始まります。冒険の先で5人は、命そして自然の儚さを知ることになります。ひとりでは立ち上がれないほど打ちのめされた心を、仲間の支えと勇気をもって奮い立ち、自分たちの力で前へ進んでいく決意にたどり着きます。
小学1年生から80代まで101人の登場人物
5人の少年たちの冒険物語に、彩りを加えるのがそれぞれの登場人物たちです。今回、市民キャストは101人ですが、実は1人2役を演じたりもしているので、トータルでは101人以上のキャラクターが登場しています。ここで振り返ってみましょう。
可児のまちの人たち、少女たち(キャンディーズ)、クラスの同級生たち、学校の先生、PTA、ヒロミ母、隣町の不良中学生、農夫たち、森の女王、森の精、森の動物と昆虫たち、闇の王、闇ダンサー、トモコ、トモコ母、そして現代の誠家族。
全ての登場人物によって『君といた夏』は成り立っています。

5か月間の稽古を通して
2025年9月末の配役オーディションから10月にキャスト発表があり、それから毎週末の稽古の日々となります。12月まではシーン毎に分かれて歌唱・ダンス・演技が繰り返し練習されます。毎回の稽古では、演出の黒田百合さん、振付の神崎由布子さん、歌唱指導の満田恵子さんはじめ講師陣そして助手の皆さんから愛ある指導の言葉が響きます。
「毎回の稽古、自分で目標を2つ決めなさい。」「今日の稽古、目標達成できた人?」
「ほぼ100点だね。ほぼっていうのがいいでしょ。まだ伸びしろがあるって事だから。」
「演劇はコミュニケーションとイマジネーションで成り立っている。」
「セリフは点でしかない、気持ちが動いて、相手のセリフを聞いて、初めて線になる。」
「自分たちで生み出して、初めておもしろい芝居になる。」
「友だちかもしれないけど、仲間じゃないよね。だってまだ助け合えていないもの。」
上田亨さんが作曲したメロディは人を元気にさせたりやる気にさせたりセンチメンタルな気持ちにさせたりしてくれます。そんな素敵なメロディと歌詞は、ただ歌うんじゃない。
「それぞれの想い、想い出が、彩りとなって歌にも現れてくるのよ。」
一つひとつの稽古の大切さを根気強く伝え続けてくださいます。毎回の稽古を大切に思うことで、自分の姿勢や行動が変わることを実感して欲しいという想いが伝わってきます。
年明け1月からはシーン毎に練習してきたものを組み合わせて、全員での通し稽古が始まります。全体像が見えてくると、物語の中で自分の登場シーンがどのような役割なのかが分かってきます。そして、これまで一緒に練習していなかった参加者たちの冴えわたるダンス、美しいハーモニー、引きつけられる演技、迫力あるアクション、目の当たりとすることで新たな刺激が芽生えます。広いはずの稽古場が狭く感じるほどの人数が集まり、ひとつの作品をつくり上げる現場。自分は出演しないシーンの歌を、振付を、台詞までも覚え始め、それが世代の異なる参加者たちの〝共通言語″となり、休憩中に誰かが歌い始めると近くにいる人が一緒に歌い踊り波紋のようにその輪は広がっていきます。
たくさんの人間が集まれば当然摩擦も生まれますが、ミュージカルの要素がそれぞれの間に潤滑剤のように流れ、歌い踊り演じている時はひとつとなれるようでした。

〝わたし達の″『君といた夏』
劇場という魔法の箱の中では、出演者を、物語を、より輝かせお客様を没頭させる、これまでの仕上げの仕掛けが施されます。衣裳に舞台美術、大道具小道具・舞台装置、音響に照明、このステージの上で昭和49年の少年たちの眩しい夏の冒険が繰り広げられます。全てに人の手が携わりつくり上げられていきます。スタッフに留まらず、舞台裏ではサポーターの皆さんが、そしてもちろんご家族の皆さんが出演者を支えます。皆の力が合わさったとき、成功させたいという気持ちが重なったとき、生きた舞台には神様が奇跡を起こすことがあるそうです。本番当日、あとはこれまでやってきたことを信じて自分たちを出し切るしかありません。
今回で5回目の『君といた夏』ですが、集まる市民キャストに合わせて毎回異なる作品となっています。本番では、〝わたし達の″『君といた夏』を全身で表現し、お客様に届けます。お客様のなかには、過去に出演経験のある方もいらっしゃいます。自分の出演回とは異なる演出を楽しみながら鑑賞されつつも、経験者だからこそ知る厳しい稽古を振り返り、苦難を乗り越えステージで輝く今回の出演者に拍手が湧きます。今回初めて鑑賞された方も、想像以上の出来栄えに、驚きと共にここまで辿り着くまでの努力を推しはかり称える言葉が贈られます。終演後のロビーでのお見送りでは、どこを切り取っても笑顔笑顔そして笑顔が溢れていました。
やりきった先にしか見られない世界、やりきった先にしか感じられない自分。目指すところまでの目標がある生活というのは、簡単なものではないですが、頑張ることで得られる張り合い、今を生きている実感が湧いてくるようです。それを自分だけではなく、家族そして、地域を構成する年齢も職業も異なる人たちと力を合わせてやり抜く。全員で頑張れた先にはそれを称賛してくださる存在も。この循環がまちの元気に繋がっていく、みんなの笑顔を見ながらそんな希望を抱きました。
創造事業課 渋谷

公演アンケートより
来てよかったです!今を生きる、自然や命のはかなさ、大切さを思い出させてくれる内容、人への思いやり、人と人の繋がり、大切なことが詰まっていました。またよい作品に出会いたいです。(50代・女性)
あれだけの大人数で一つのものを創り上げることができるのは、一人一人の努力があるからこそだと思いました!素晴らしくて、もう一度見たくなりました!(30代・男性)
市民ミュージカルと聞いて、あなどっていました。とても本格的で、素晴らしかったです。歌とダンスと演技で、飽きることなく、集中して観ていられました。くすっと笑える所あり、涙が出そうな感動ありで、本当によかったです。(40代・女性)
<作・作詞>瀬戸口 郁
<作曲・音楽監督>上田 亨
<演出>黒田 百合
<振付>神崎 由布子
<歌唱指導>満田 恵子
日 程
2026年
2月28日(土) 18:30
3月 1日(日) 14:00
会 場
可児市文化創造センターala 主劇場
出 演
市民キャスト 101人
集客数
1,367人
主 催
(公財)可児市文化芸術振興財団
後 援
可児市、可児市教育委員会