Special アーラ未来の演奏家プロジェクト 佐野秀典、三浦明子、サミュエル・エリクソン インタビュー
2014年から始まった本プロジェクト。コーディネーターをつとめる佐野さん。今回の演奏家お二人にインタビューを行いました。
※感染症拡大予防のため今回の「アーラ未来の演奏家プロジェクト」は中止となりました。
佐野 今回出演いただくお二人は、過去2回登場したヴァイオリンの三浦明子さん、新日本フィルハーモニー交響楽団のチェロ奏者サミュエル・エリクソンさんです。お二人は兵庫芸術文化センター管弦楽団に過去一緒に在団しており、そして結婚された夫妻です。昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止の決断でしたが、今回はwithコロナの中でもしっかりと対策をした上で、多くの可児の皆さんと繋がりを持てるようなプロジェクトにしたいと考えています。これまでの「未来の演奏家プロジェクト」は、“初めて出会った2人の演奏家”が可児で5日間合宿するというものでしたが、以前から初めての共演の他にも、もう一つ、知っている者同士のプロジェクトをやりたいと思っていました。今回は生活を共にしている夫妻の共演で、どんな化学反応が起こるのか楽しみにしています。2人だけでの共演はこれまでないとのことですのでそこも聴きどころです!
― ヴァイオリンの三浦明子さんは、今回でプロジェクト3回目の出演となります。過去の滞在期間中、思い出深かったことは。
三浦 まず、今回再び出演させていただけること大変嬉しく思います。このプロジェクトの一番の醍醐味は、学校訪問であると私は思っています。子ども向けのコンサートはあっても、授業形式はなかなかできるようなことでもなく、私たち音楽家も、そして子ども達もとても良い経験だと思います。また、佐野さんのコーディネートに毎回とても感銘を受けます。子ども達を惹きつけるタイミングというのがあり、その瞬間に緊張していた子ども達が一気に音楽を身近に感じ寄り添ってきてくれる気がします。その時の子ども達は本当に嬉しそうにキラキラするんです。私の年齢になると、子どもを育てている友人も多いのですが、子ども達の吸収力は本当に凄く、感受性も豊かです。そんな貴重な時に音楽について何かを感じてもらえたのかなと嬉しく思います。
私は曲を仕上げるまでにとても時間がかかる方なので、複数の曲をやるリサイタルというのは、嬉しい反面、正直不安な気持ちもあります。でも、リサイタルというのは私たち音楽家にとって、やはりかけがえのないものであり、そして本当に有難いものです。その曲について考え、弾き方などいろんなことを試行錯誤します。自分のしたいことが本番で表現でき、何かをお客様が感じ取ってくださった時の嬉しさは、感無量です。
そして、これはこのプロジェクトならではのことですが、学校訪問へ行ったときにできた新しい友だち(児童の皆さん)が度々、滞在中に遊びに来てくれたりしたのが嬉しかったです。「じゃあ、アーラに遊びに行くね」という考えが、子ども達の中でもパッと出るというのは、大変珍しいのではないかと思います。それだけアーラが皆さんの憩いの場になっているのだなと感じました。そして最終日のコンサートには親御さんも一緒に聴きに来てくださったり、常に子ども達に、そして可児の皆さんの温かさに救われました。
― チェロのサミュエル・エリクソンさんはプロジェクト初登場です。意気込みとご夫婦共演にあたり演奏予定曲について聞かせてください。
エリクソン 私は新日本フィルハーモニー交響楽団の公演でアーラ主劇場で演奏したのは1回しかありませんが、とても温かい雰囲気であったという印象がまだ残っています。今回は、自分がとても楽しいと思っている曲を、可児の皆さんとシェアするのを楽しみにしています。
ラヴェルのデュオは、独創性には他の追随を許さないもので、是非2人で挑戦してみたい一曲です。また、コダーイのチェロソナタは、チェロの音色や技術がふんだんに使われ、どんな楽器なのか、どんなことができるのか、そんなことを知れる曲だと思いますので演奏候補に考えています。
最終日のコンサートは、今回初めて午前・午後でプログラム内容を変えコンパクトに魅力をぐっとまとめた2回公演となります。クラシック初心者の方も楽しめるような有名曲でお贈りする午前の回と、ヴァイオリンとチェロの演奏技術が堪能できるラインナップでの午後の回、好みに合わせてお選びください。