第52回 アーラの運営にかかわる市民団体について
2014年11月26日
可児市文化創造センターala 事務局長 山本和美
アーラに視察に来た方からアーラの運営にかかわる市民団体についてよく質問があります。その回答でまず出てくるのは「alaクルーズ」です。alaクルーズは、アーラの建設が動き出した平成8年度に組織された文化センター基本構想等市民懇話会に市民公募で集まったメンバー、そして平成10年度からの設計段階で組織された文化センター市民活動研究会の公募メンバーが中心となって平成13年11月設立されたボランティアグループです。文化創造センターのパートナーとして活動する市民スタッフ組織ということで「alaの乗組員」という意味で「alaクルーズ」と名称を決定しました。平成16年11月には、NPO法人として認証を受けて現在は「特定非営利活動法人alaクルーズ」が正式名称となっています。アーラには、alaクルーズの活動や市民サポーターをバックアップするための部屋としてクルーズが管理運営する創造スタッフ室が設けられており、ここを拠点として活動しています。
alaクルーズは、そのホームページによると自主運営するボランティア組織として、各種事業や活動を展開するとともに、(公財)可児市文化芸術振興財団が行う諸事業と連携し、市民の文化振興に対する意識の高揚を促すとともに、会員個々が自己実現と生きがいを得ることにより、市民の文化・芸術の創造に寄与することを目的として活動することとしています。活動は、多岐にわたっています。まず、最初に挙げられるのがフロントスタッフ活動事業です。財団主催事業に係る劇場でのフロントスタッフを担当します。平成25年度の実績では35公演で活動していただきました。さらに市民団体が主催し、要請のあった事業でも同活動を行っています。25年度実績では9公演にかかわってみえます。フロントスタッフは、アーラへ来られたお客様と直接かかわりますので、アーラの顔というポジションになります。そのためクルーズの皆さんは、アーラ開館前からプロの講師を招聘してマナー講座を開催し研鑽を積まれました。その姿勢は今でも続いています。この11月16日にもフロントスタッフ研修を実施されました。午前中座学を行って、午後には実際に主劇場で開催されたコンサートでOJTを実施しました。私のような素人目でみると本当にプロかと思うほどの立ち居振る舞いでしたが、講師からは相当辛口の講評があったようです。
その他にも自主企画したギャラリー等での作品展や親子を対象としたもの作りワークショップ(WS)の開催。さらにアーラの冬の風物詩となっているアーラ・イルミネーションでは毎年テーマを決めイルミネーションの主要部分を手作りしてもらっています。先日制作現場を見せてもらいましたが、針金で作ったベースにLEDの入ったホース状の材料を幾重にも曲げながらテーマに合わせたキャラクターを形作っていきます。電源が入っていない状態では一見すると曲がったホースが積み重なっているという感じですが、そこに電源を入れるとキャラクターが浮き上がってきます。制作には相当な手間暇がかかっています。12月6日からのアーラ・イルミネーション乞うご期待です。開催期間中にこの事業の関連としてLED電球を使ったシェード制作のWSも開催してもらいます。来年2月にアーラで開催される世界劇場会議国際フォーラム2015でもalaクルーズのPRを計画しています。また、こうした事業を進めるうえで常に自らのスキルを上げていくため、または、再チェックするために必要な研修も企画実施しています。こうした活動目的や事業内容については、NPO法人組織の団体として、財団との調整をしつつ理事会、総会で自己決定されます。ある意味自立したボランティア団体であるといえます。
他にもいくつかの団体が活動しています。一つは映画祭実行委員会です。可児市には映画館がありません。そのため、財団はアーラ開館以来市民の皆さんに身近な場所での映画鑑賞機会を提供してきています。開館当初は、alaクルーズの協力を得て実施していましたが、現在は、映画に興味のある市民からなる映画祭実行委員会というボランティア組織ができています。年に2回のアーラ映画祭を企画から運営まで行ってもらうよう財団がサポートしながら実施しています。毎年10月の映画祭では、その上映作品の監督を招待してトークショーや交流会を開催したり、パネル展示なども企画して実施しています。もう一つ、アーラでは「歌舞伎とおしゃべりの会」という歌舞伎普及講座を毎年開催しています。この講座の運営サポーターを務めてもらっているのが可児歌舞伎同好会です。平成8年、廃業になった衣裳屋の歌舞伎貸衣裳が可児市に寄贈されたことがきっかけとなって、衣裳の整理や歌舞伎の勉強会が始まって平成12年に結成された同好会です。
また、アーラには、ROCK FILL JAM in ala というアマチュアミュージシャンにロック、ポップスなどの舞台演奏の機会を提供するライブイベントがあります。これを企画運営するのはROCK FILL JAM制作委員会です。この事業は、2年前までヤングミュージックフェスタという事業名で実施していました。このイベントの始まりは、平成6年頃に市内の春里公民館で春里地区を中心とする有志が集まって、公民館の野外ステージで、ロックバンドを中心としたライブイベントを開催したことからです。私も当時そこで勤務していたので、あまりにも音が大きかったため、公民館周辺の住民から何本か苦情の電話を受けた記憶があります。その時の有志のなかの何人かが今もalaクルーズの役員を務めています。数回公民館で開催したのちに花フェスタ記念公園のプリンセスホール雅に会場を移し、そしてアーラ開館の年にアーラに会場を移しています。当時から通算するとかれこれ20年ぐらいつづいているイベントとなっています。当初の運営メンバーから世代交代した形で現在の制作委員会という組織が運営を担っています。
この他にも平成21年から3年継続の「ワークショップリーダー養成講座」終了後の展開として生まれたWS活動団体「FunFan ala (ファン・ファン・アーラ)」がいくつかのWSや制作稽古のサポートに入ってくれています。また、アーラの看板事業であるアーラコレクションを実施するときは、市民サポーターを募集しています。出演者を応援し、公演制作業務をサポートするボランティアスタッフです。今年度の「黄昏にロマンス」は東京での稽古となったので、稽古期間中のサポートはありませんでしたが、公演中や公演前に行う関連事業のサポートをお願いしています。来年3月公演の市民ミュージカル「君のいた夏」―スタンドバイミー可児― でも市民サポーターの皆さんが力を貸してくれます。アーラがWSとして行っているアーラ・ユースシアターは児童・生徒約30人で組織されていて、通年で活動しています。年1度のアーラでの公演の後は、その舞台を持って福祉施設にアウトリーチしています。このWSの運営には子どもたちの保護者の方々にも大きな力になっていただいています。ボランティアではありませんが、アーラの各事業でサポートに入ってもらうのが、シルバー人材センターの方々です。演劇公演の仕込みやバラシの手伝いや美術展等の展示パネルの組み立てやバラシ、作品の受付など多くの業務に従事していただいています。
このように財団主催の各事業は、多くの市民団体に支えられて成り立っています。公共劇場、公立文化施設にかかわる市民参加、ボランティア活動についての議論はさまざまあるようです。これまでの私の経験上、市民の自主的な活動から始まった事業や組織は、持続性と独立性が高い感じがします。いわゆる行政の指導というか要請に基づいて組織された団体は自立することがなかなかできないイメージを持っています。どちらにしても一番重要なのは組織の中心となる人材がいるかどうかが大きなポイントになると思います。アーラにかかわっている市民団体もalaクルーズのように自立している団体もあれば、そこまで組織化されていないところもあります。財団としてはどの団体にも自立してもらい、財団と適度な距離感を保ちながら各事業を協働して実施していけるといいなと考えています。そうした中で一つ心配な部分があります。これはアーラにかかわる市民団体だ