文化芸術鑑賞だけを経営目的にはしない
2024年8月8日
可児市文化創造センターala 館長 篭橋義朗
令和5年度はコロナ禍もようやく収束し、私たちの任務として、まずはコロナ禍以前の経営状態に戻す活動の年となりました。令和5年度は来館者数においてはまだまだ以前のような人数に達しませんでした。これはコロナ感染予防としてイベント等を自粛してきた影響によるものです。しかしアーラ主催の事業におけるチケット販売額は、開館以来、最高額に達しました。これはコロナ禍の期間中の感染に対しての疑心暗鬼で鑑賞を控えていたお客様がようやく戻ってこられたためと大変嬉しく思っています。ようやくこの時期になって人々の心を癒し、明日の元気のために文化芸術を鑑賞する機会が待ち望まれていたのだと思います。
アーラの事業での大きな柱は社会包摂事業と鑑賞事業であります。この鑑賞事業のチケット収入の増加は、ほとんどが収入を見込めない社会包摂事業とは相反する組み立てのように思われるかもしれませんが、アーラの支持者、「岩盤」となるお客様を増加させていく確実な手法であると思っています。この「岩盤」の拡大がすなわち文化芸術の盛んなまちであり、「住みよく心豊かなまち」となるのだと思っています。そのための「まち元気プロジェクト」なのです。そして、そのことが文化庁の外郭団体である独立行政法人日本芸術文化振興会の補助金の採択につながっているのだと思います。それはまちづくりであったり子育てであったり多文化共生や観光にウィングを拡げた国の文化芸術政策を体現しており、それがこの可児市であることの証左であると理解しています。つまり、さまざまな人間活動のなかに文化芸術が関わることによって、生活の質の向上や心の豊かさの醸成につながるのだと思っています。
今日も学校帰りの子どもたちが水と緑の広場で遊んでくれています。休日になれば家族や高齢者の方たちが散策したり、ロビーで時間を過ごしたりしています。劇場・ホールで芸術を鑑賞するためだけの施設ではこのような現象は起こりません。公立文化施設である劇場の経営的にはチケット料金や施設利用料金に反映しないことに課題をおくことなく、文化芸術活動を目的にしない市民が行き交う劇場こそがこれから求められる劇場であると思います。