第1回 芸術の殿堂ではなく
2007年4月23日
可児市文化創造センター館長兼劇場総監督 衛 紀生
可児に居を構えてそろそろ1ヵ月になろうとしています。年度明けに就任してから、組織と職員意識の改革をドラスティックに進めて来ました。何かが少し変化してきているとの実感はあるが、その成果が試されるのは、来年度以降に事業の構成で大きく舵を切ったときだろうと思っています。
むろん、それまでにも手をつけられるものは速断で改革をしています。たとえば、二種類のパッケージ・チケットを作りました。「TOP SELLECTION チケット」と「演劇まるかじりチケット」です。あわせて、地元企業のメセナ活動を促進する目的で、地域の子供たちに企業ができること、として「私のあしながおじさん」プロジェクトを進めています。
「私のあしながおじさん」プロジェクトとは、10,000円から13,000円のパッケージチケットを企業が子どもたちに贈り、子どもたちは、鑑賞してから「ありがとうカード」に感想や感謝の気持ちを書いて担当者に送るという仕組みで、その仲立ちと「ありがとうカード」の作成を劇場がさせていただくものです。
地域市民の製品に対する見方は近年大きく変化しています。「価格が高くても積極的に地域に貢献する企業の製品を購入する」と「同一価格なら」を合わせると74%の生活者が何らかのかたちで自ら所属する地域社会との良好なリレーションシップを持っている企業に好意を持っています。また、良質の舞台に触れる機会を与えてもらうことで、子どもたちの地域社会に対する意識にも大きな変化が見られることでしょう。
私は、 可児市 文化創造センターを「芸術の殿堂」ではなく、「人々の様々な思い出が詰まっている人間の家」でありたいと思っています。たとえば、就任二日目に、夜間、劇場の外壁にガラスに姿を映してヒップ・ホップ・ダンスを踊っている若者たちに声を掛けました。「君たち、ここの劇場でダンスバトルをやりたくない?」一瞬の間があって「やりたいっすよ」という返事が返ってきました。彼らと彼らの仲間たち、応援者たちの、そのネットワークにいる若者たちにもこの劇場に「思い出」を残してほしい、と思ったのです。担当者も決まり、来年度に向かってプロジェクトは動き始めています。
来年度に向けての事業検討やシステム改革のプロジェクトチームは16に上りました。チームリーダーはすべて若い職員にしました。彼らが次の時代の 可児市 文化創造センターを動かすからです。むろん、彼らの力量を試す意味もあります。
いずれにせよ、「そろり」と 可児市 文化創造センターは、しかし確かな手ごたえで動き始めました。私たちのゴールを以下に記して今回は筆を置きます。
★ Delight (感動のある、喜びを与える)な劇場
★ Alive (生き生きとした) な劇場。
★ Demand (社会的必要) に応える劇場。