Special 「上原彩子 & 神尾真由子 DUOリサイタル」上原彩子&神尾真由子インタビュー

チャイコフスキー国際コンクール優勝の 2人による夢の共演

2002年の第 回チャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門において日本人として初の第1位に輝いた上原彩子と、2007年の第13回同・ヴァイオリン部門の優勝者である神尾真由子によるデュオ・リサイタルが実現。

-上原さんは、岐阜ご出身ということもあり、アーラには今まで4回登場されています。神尾さんも2010年に、まだ結婚される前のミロスラフ・クルティシェフさん(ピアニスト)とのデュオで来ていただいてます。そんなお二人ですが、まだ一度もステージで共演されたことがないとか。今回のアーラ公演がその記念すべき最初になるなんて、とても名誉なことです!

上原 実はお会いしたのも昨年が初めてだったんです。

神尾 そう、偶然リハーサルの時間がちょうど前後になって…。

上原 神尾さんは小さい頃から活躍されていたので、コンクールでも皆さんの期待を一身に集めておられて、そんなプレッシャーの中で優勝を勝ち獲るなんて、演奏の素晴らしさは言うまでもなく、精神的にもタフな方なんだと頼もしく思っていました。

神尾 受賞者も多かったので、自分としては優勝してあそこまで注目されるとは思っていませんでしたし、その後の上原さんの姿を見るにつけ、私もむしろこれから頑張らなきゃっていう気になっていました。ずっと共演できたらいいなと思っていたので、やっとその願いが叶う歓びを噛みしめています。

上原 こちらこそ! どうぞよろしく御願いします。

-栄えあるチャイコフスキー国際コンクールの覇者同士である、お二人が共演したら素敵なことが起こりそうだと思って、今回は主催側からオール・ロシア・プログラムを提案させていただきました。先ずはヴァイオリンとピアノで演奏するチャイコフスキーの小品2つから…3曲からなる〈懐かしい土地の想い出〉は第2曲「スケルツォ」と第3曲「メロディ」がヴァイオリン奏者のアンコール・ピースとしてもお馴染みです。

神尾 そうですね。第2曲と第3曲はサイズ感も手頃で、私も子どもの頃から馴染みがありましたが第1曲「瞑想曲」は師事していたザハール・ブロン先生に勧められるまで弾いたことがありませんでした。第1曲はもともと〈ヴァイオリン協奏曲 ニ短調〉の中間楽章にするつもりで書き始められたもので、チャイコフスキー特有の”繰り返し”が少し冗長な感じがしてとっつきにくかったのですが、先生に励まされて仕上げることができた想い出深い曲です。ヴァイオリンと管弦楽のために書かれたものが原曲である〈ワルツ・スケルツォ〉も同様で、先生にこういう小品はここぞという時の”勝負曲”にしなさいと教わりました。あれから時を経て私も成長したはずですので、今ならしっかりと自信をもって演奏できると思います。

上原 〈懐かしい土地の想い出〉はこれまで殆ど弾いたことがないし、〈ワルツ・スケルツォ〉も今回が初めてかも。確かに 繰り返し は多いけれど、それを上手く料理するのが腕の見せどころですね。

神尾 それがチャイコフスキーの魅力でもあるんですが…メロディ・メイカーなのでお腹いっぱいになりそうで(笑)。とにかく頑張ります、ご期待ください。

-ラフマニノフの〈ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調〉は上原さんのソロです。

上原 〈ソナタ第1番〉より、余分な装飾がそぎ落とされてキレイにまとまっているので弾きやすいし聴きやすい。ピアノ協奏曲など他のラフマニノフの大曲と同じく、最初は底なし沼のような暗いところから始まって最後には歓喜に至る、そんなドラマティックな展開がここでもコンセプトとして貫かれているのがいいですね。彼が好んで使った教会の鐘の音を思わせる和音も聴くことができます。

-〈ヴァイオリン・ソナタ第1番 ヘ短調〉はプロコフィエフの中でも「最も憂鬱で情熱的な作品」と言われている、なかなかクセの強い曲ですが…。

神尾 ロマンティックな部分もあるけれど、感情だけでなく情景を表現しているようなところ…プロコフィエフ自ら「墓場を抜ける風」と称したヴァイオリンの滑り落ちるような音階なども聴きどころです。どこも技巧的で表情豊かなので飽きさせない。不協和音が続いたりもするけれど、決して難解ではなくわかりやすいのでそういう場面だと思ってむしろ、その独特な雰囲気を楽しんでいただければ。

上原 神尾さんと一緒にロシアもののヴァイオリン・ソロが弾けると聞いて、プロコフィエフの 1番 だったらいいよねって事務所の担当者とも話していたので、凄く嬉しいです。私はまだ弾いたことがないけれど、神尾さんにぴったりの曲だと思います…楽しみです!

-これを機会にぜひ親睦を深めてください。お二人には”子育て”という共通の話題もありますし…。

神尾 うちは男の子で小3。1人でも苦労しているのに3人も育てあげた上原さんはえらい。

上原 女の子ばかり3人なので、それぞれお姉ちゃんを見て学んだりして、うちはそれほど手がかからなかったんですよ。

神尾 今年度から大学での授業もプライベートでのレッスンも増えて、目の回るような忙しさ。演奏旅行がいちばんの息抜きかもしれません(笑)。

上原 私は大学とかでそれほど教えた経験がないので神尾さんの方がかなりベテランですね。ぜひその辺りのお話をじっくりと伺いたいです。

取材/東端哲也 撮影/中野建太 協力/フリーペーパーMEG

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