多文化共生プロジェクト2021「こころの井戸」

2021年07月01日

時間も場所も越えて、多様なルーツ持つ市民と共に創り上げる演劇

多文化共生プロジェクトでは、参加者へのインタビューを元に創作を行う「ドキュメンタリー演劇」を中心に2007年から上演しています。昨年2020年度は新型コロナウィルスの影響で集まって稽古を行うことができず、オンラインを通じたアニメーション作品の制作を行いました。2021年度はなんとかお客様の前で作品を上演しようと、演出家の鹿目由紀さんと知恵を絞り、舞台に出演する人数を絞った『こころの井戸』という作品を制作しました。

作品の舞台は”井戸”。出演者へZOOMでのインタビューを重ね、聞き取った内容を元に台本を書き上げたオリジナル作品です。「戦争で水の心配をして井戸を掘った」「アマゾンでジャガーに襲われそうになった」それぞれの国での様々な体験、様々な理由で日本に住むことを決めた人々。インタビューでは、井戸を起点にそれぞれの人生が語られ、それが台本に凝縮されました。

出演者は、事前に声を収録して参加する声の参加チーム27名と、舞台に出演する8名の合計35名。ブラジル、日本、フィリピン、インドネシア、タイ、スリランカ、イラク、ペルー、トルコにルーツのある方が参加しました。さらに、アドバイザーチームの住吉さんのお母さん(日本からのブラジル移民第一世代)もブラジルからZOOMで参加してくださいました。日本の夜8時はブラジルの朝8時。地球の反対側の一日の始まりを感じながらインタビューができたのは、オンラインならではの感動でした。

そして、今年も立ちはだかったのは、新型コロナウィルスの壁。まん延防止等重点措置の発令を受け、大部分の稽古が中止となり、出演チームがアーラで稽古ができるようになったのは、本番の3週間前。残りの稽古回数が5回という厳しいタイミングでした。様々な言語が入り交じる作品のため、セリフの順番を覚えるだけでもかなり大変です。そんな中でも、参加メンバーは、良い作品を作ろうとセリフや立ち位置のアイディアを出し、積極的に作品に関わりました。そんな努力が実り、セリフが繋がり、本番を迎えることができました。稽古中、鹿目さんは「大丈夫」「OK!」と、常に参加者やスタッフを励ましてくれましたが、公演後には「稽古日数が少なくヒヤヒヤした」と本音がこぼれました。

今回、声の出演チームは集まることができず、公演を終えた後はすぐに解散。コロナさえなければ・・・という寂しい思いはありましたが、制約がある中でも無事に公演ができ、拍手の中で幕を閉じることが出来たことは、それ以上の喜びでした。


創作日程 2021.6.19~7.31(計8回)
公 演 日 2021.8.1(計2回)
会  場 ala演劇ロフト
集 客 数 92人
参 加 者 舞台出演8人、声のみの出演27人(外国にルーツを持つ人、日本人)
脚本・演出 鹿目由紀
アドバイザー 住吉エリオ、村上ヴァネッサ、山田久子
協  力 NPO法人可児市国際交流協会