Special 「佐渡裕×新日本フィルハーモニー交響楽団」佐渡裕インタビュー

新音楽監督の就任を祝う メモリアルなコンサート

新音楽監督の佐渡裕がアーラ初登場。
2023年4月に新日本フィルハーモニー交響楽団の第5代音楽監督に就任する佐渡裕が、地域拠点契約を結ぶアーラに初登場。ソリストに実力派ピアニストの及川浩治を迎え、華やかなプログラムを指揮して皆さんにご挨拶。

-佐渡さんは昨年4月から「すみだ音楽大使」に就任してYouTubeで「すみだ佐渡さんぽ」を配信されるなど、既に音楽監督就任前から新日本フィル本拠地を置く墨田区の顔として活躍されていますね

子どもの頃から新日本フィルが出演していたテレビ番組『オーケストラがやってきた』で小澤征爾先生や山本直純先生の姿を見て育ち、縁があってその憧れのオーケストラを指揮してデビューすることができたのは1990年のことでした。その後も若い時代に多くの演奏機会を与えていただき、新日本フィルに育ててもらったと言っても過言ではありません。すでに指揮回数は100回を越えました。「音楽大使」としてあらためて街を歩いてみると、人情豊かな皆さんが「すみだ」を愛しているのがよくわかりました。ホールとオーケストラがあって地元の協力体制も整っているのって地域にとって最強のトリオ。一人でも多くの方に、ホールに座って生の音に対峙する喜びを体験して欲しい。そのためにこれからもできることは何でもやって、頑張りたいと思っています。

-すみだの皆さんにとってトリフォニーホールが誇りなのと同じように、アーラも可児市民に愛されている街のシンボル。新日本フィルも、いちばん親しみのある馴染みのオーケストラです。4月の公演は佐渡さんとの新たな門出をお祝いする、記念すべき初めてのコンサートとして誰もが楽しみにしております。

”はじめまして″のご挨拶にふさわしい華やかなプログラムをお約束します。冒頭の〈グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲〉から、超高速のジェットコースターに乗っているようなスリリングな演奏で、コース料理の幕開けをカッコよくきめます!

-〈ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲〉は、反田恭平 with ジャパン・ナショナル・オーケストラとの共演などでもクラシック・ファンの記憶に新しい鮮烈な曲ですね。及川さんを迎えた新日本フィルの演奏にも大いに期待しています。

及川くんとは少し久しぶりの共演になりますが、かつては大阪で大好評のシリーズで毎年ご一緒して旋風を巻き起こしていたんです。今回ソリストにお迎え出来て心から喜んでいます。テクニックも素晴らしいけれど、彼の持ち味はあの情熱的な演奏。パガニーニというヴァイオリンの天才が書いたテーマを使って、ラフマニノフというピアノの名手があの手この手で変奏を繰り広げていく壮絶な曲。狂詩曲=ラプソディーという名の通り自由奔放にピアノが変化していくのも面白いけれど、壮大なオーケストラ・サウンドとの組み合わせも絶妙です。

-そしてメイン・ディッシュは〈ベートーヴェン/交響曲 第7番〉ですね。

”運命”とか”第九”にはネームバリューで及ばないけれど、聴けば誰もが映画やドラマ、CMなどで耳にしたことのある人気曲です。クラシックを代表する楽曲としての風格もあれば、まるでロックのようなビート感にも溢れている。実は びっくり交響曲 と言ってもいいようなリスナーを驚かせる仕掛けが各楽章に組まれていて、第2楽章で葬送行進曲のようにがらりとスタイルを変えたり、ワクワクさせるポイントもいっぱい。何より即興の名人だったベートーヴェンがオーケストラという大きな集団を使って、一瞬にして大ホールの空気を変えてしまうような凄い魔法を味わうことができるのもいちばんの魅力だと思います。実は思い出深い僕の新日本フィルデビューもこの曲でした。200年以上も昔に誕生した作品ですが、アーラでは”今を生きてるぞ”という音、”今まさに燃えている”ベートーヴェンをぜひ披露したい。

-佐渡さんにとって”原点”ともいえる新日本フィルとの関係はいかがですか?

30年前は”変わり者”が多くて(笑)クセの強い演奏家の集まりのようなオーケストラでしたが、今は団員それぞれが個性を発揮させつつも柔軟性があり、全体にまとまりが感じられる。集団でありながらひとりひとりが意志を持って動いているオーケストラが私にとっては理想なので、そこは大切にしたいですね。小澤先生がタクトを振っていた当時に自分が強烈に感じていたあの新日本フィルの熱気と、今の若い世代の卓越した演奏技術とをうまく橋渡しするように繋げられたら、50年の歴史を持つこの楽団の魅力が、51年目からさらに輝いていくと思っています。とにかく新日本フィルと新たに関係を深めて、沢山の方に音楽の感動を届けられることを嬉しく思っています。その第一歩をアーラで皆さんに是非見届けていただけたらと思います。

取材/東端哲也 撮影/中野建太 協力/フリーペーパーMEG

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