作品紹介

愛おしくて、憎めない人間たち。
寄り添って生きる、おかしな人々の疑似家族ドラマ。

『人魚伝説』、『焼肉ドラゴン』などをはじめ、家族と人間の可笑しさや哀しさを書いて定評のある鄭義信。彼の幻の名作『秋の螢』が12年ぶりによみがえります。
都会の片隅にある忘れ去られたようなボート乗り場。そこに吹き寄せられたようにやってくる女と男たち。どうしようもない孤独を抱えているがゆえに優しく、可笑しく、そして切ない疑似家族ドラマ。家族の絆が薄れつつある現代にあって、本作はあらためて「家族とは」「絆とは」と問いかけます。
演出は、初演に引き続き松本祐子。現代劇からミュージカルまで幅広い作品を手掛ける彼女が12年の時を経てどのような新しい『秋の螢』をみせるのか。
主演は、本シリーズvol.5『高き彼物』に出演し、キレのある演技で観客を魅了した細見大輔。数々のCMや映画、人情ドラマで活躍の渡辺哲、NHK連続テレビ小説「おしん」でおなじみ小林綾子、さらに福本伸一、粟野史浩が円熟した演技で脇を固めます。

あらすじ

タモツ(細見大輔)の父・文平(粟野史浩)は21年前に若い女性と駆け落ちし、以来タモツは伯父の修平(渡辺哲)に育てられた。二人は場末の貸しボート屋を細々と経営し、慎ましく幸せに暮らしていたが、ある夏の終わりの昼下がり、親子のように暮らす二人の下に、失業中のサトシ(福本伸一)が転がりこむ。それがあざなう波のたち始め。今度はお腹の大きなワケ有りのマスミ(小林綾子)が訪ねてくる。
都会の片隅に寄り合う、ごくごく普通で、ちょっぴりさびしがりやの女と男たち。
そんな4人が季節はずれのホタルに見たものは……。