アーラタイムズ2023年6月号より転載。
アーラで行われる公演のフロントスタッフは、アーラクルーズという団体が担っています。アーラクルーズは、アーラ開館前の2001年にボランティア組織として、市民の文化・芸術の創造に寄与することを目的として作られました。現在は29名の市民が参加しています。フロントスタッフとは、コンサートや演劇公演などの受付・もぎり・客席案内・場内監視などをするスタッフのことで、制服を着て、笑顔でお出迎えし、お客様の鑑賞体験をサポートしています。お客様を最前線でお出迎えする、「劇場の顔」として大切な役割を担っています。他の多くの劇場と異なり、その大切な役割を市民ボランティアが担っていることが、アーラのオリジナリティの一つとなっています。そのようなフロントスタッフを担うには、やろうと思ってすぐにはできません。アーラでは毎年「フロントスタッフ養成講座」という、プロの講師をお招きしてお客様をお出迎えするための座学と実技講座を開催し、そのノウハウを身に着ける機会を設けています。アーラクルーズメンバーも、毎年受講して、フロントスタッフの在り方を学び、実際の公演のお客様のご案内に役立てています。
今回、アーラクルーズメンバーにフロントスタッフ活動のやりがいなどについて話を聞いてみました。一番印象的だったことは、「違った自分になれる」「日常を離れて自分を変えられる」「公演後にお客様から感謝されて達成感がある」ということでした。私服から制服に着替えて、家庭での役割を離れて、プロの公演のスタッフの一員になることで、凛とした気持ちで出演者やアーラスタッフと一緒に公演をつくりあげる充実感を感じることができるとのことでした。また、とあるメンバーは、フロントスタッフ活動中に、旦那さんがお客様として来場されました。その夜、家に帰ってから旦那さんに「あんなに本格的に対応していて、別人のようだった」と驚かれたとのこと。それ以降、家族がフロントスタッフ活動に理解を示してくれ、いつも快く「アーラに行っておいで」と送り出されるようになり、家事や仕事の合間の生活のリズムの中にフロントスタッフの活動がよい感じに馴染んだそうです。
サードプレイス(自宅でも職場でもない、居心地のいい第3の場所)という言葉もあるとおり、アーラでの活動がそのような笑顔が集う居心地の良い場所としてありたいと願っています。